国が推奨しているがん検診の1つに大腸がん検診があります。
大腸がん患者は40歳代から増加します。
検査自体はとっても簡単。便を取って出すだけ。
それでも「何も症状がないから、まあいいか」と放置してしまう方も少なくありません。
外来で働いていると、「去年の検診で引っかかったけど、痔だと思って放置していました」「数年前に検診を受けて陰性だったので、久々に受けました」という言葉を聞くことがよくあります。そのたびに、「もう少し、検診の意味や必要性を知ってもらえていたら」と思います。
「大腸がん検診とは?」を外来看護師がわかりやすく説明していきます。

大腸がんは身近な病気
国立がん研究センターの統計によると2023年に大腸がんと診断された人は全国約15万人。
2024年に大腸がんで亡くなった人は約5万人。日本人のがんの中でも患者数・死亡数ともに上位に入る、身近ながんです。
最近でも俳優、タレント、ミュージシャンの訃報や手術の報告をネットニュースでも目にします。
しかし、同じ統計では、大腸がんと診断された人の5年相対生存率(病気以外で亡くなった影響を取り除いた、病気がどのくらい命に影響したかを表した割
合)は全体の約69%でした。早い段階で見つけて治療できれば、治る可能性が高くなるがんでもあります。
「早く見つける」ための入口が大腸がん検診です。

大腸がん検診どんな検査か
対象年齢と検査の間隔
市町村からお知らせがあるのは対象40歳以上、受診の間隔は1年に1回です。
お住まいの市区町村によって異なることがあるので、検診を受けるときは、自治体から届く案内通りに行ってください。
どんな検査か:検診で行うのは「便潜血検査」
市区町村が行う大腸がん検診は便潜血(べんせんけつ)検査です。
便潜血検査とは、便の中に目に見えないほどのごく少量の血液が混じっていないかを調べる検査です。
検査の方法は、とても簡単です。からだに負担なく受けられる検査です。
①専用キット(細い綿棒の採取スティックと専用容器)を市区町村の指定の病院に取りに行く。
②自宅で、便の表面を採取スティックに便を付けて専用容器に入れる。
③これを2日間行う。
・できれば2日間連続で採取することが望ましい。
・同じ日の朝と夜に排便があった場合は2日目として採取することは可能。
・便秘などで2〜3日採取日が空いても問題ない。
④指定された期間内(通常4〜7日以内)に検診会場や医療機関に提出する。

何を調べる検査か
便潜血検査が調べているのは、大腸がんそのものではなく、便に血が混じっているかどうかです。
大腸がんやポリープ(大腸の粘膜にできる小さなできもの)は、便が通るときに擦れて、ごく少量の出血が出ることがあります。
その出血を目に見えない段階で見つけようというのがこの検査の考えです。
検査の精度
国立がん研究センターの2024年度版の「有用性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」によるデータ
・感度84% :大腸がんのある人が、検査で陽性になる確率
・特異度92%:大腸がんのない人が、検査で陰性になる確率
これは、大腸がんのある人の約8割は陽性になります。残り2割の人は1度の便潜血検査では見逃される可能性があります。
大腸がんがあっても、そのときにたまたま出血していなければ、陰性になることがあります。
国立がん研究センターのがん情報サービスにも、「がんは1回の検診で見つからないこともある」と書かれています。
結果が陰性であっても安心せずに、毎年便潜血検査を続けることが大切です。
陽性になる主な原因
「便潜血検査が陽性」とは、「便から血液の反応が出た」という意味です。「がんが見つかった」という意味ではありません。
出血の主な原因として、次のようなものが考えられます。

これらの原因は、便の検査だけでは区別ができません。
「陽性の原因は痔だろう」と自己判断することはとても危険です。痔がある人でも、大腸がんがある可能性があるからです。
外来でも「痔があるので陽性になるのは当たり前だと思ってました」と話される方がいらっしゃいます。気持ちはとてもわかります。
けれど、原因をはっきりさせるには、大腸の中を直接見る精密検査が必要です。主に大腸カメラです。
国立がん研究センターのがん情報サービスでも、検診の結果が「要精密検査」となった場合は、必ず精密検査を受ける必要があるとされています。
陽性者でがんが見つかる割合
ここで、いちばん多くに方が気になる「陽性者でがんが見つかる割合」だと思います。公的統計をもとに見ていきましょう。
厚生労働省の「地域保健・健康増進推進報告」(2023年度)をもとにした日本医師会の資料では、大腸がん検診の結果が次のように示されています。
・検診を受けた人:約330万人
・要精密検査となった人(便潜血検査が陽性):約17万人
・そのうち大腸がんが見つかった人:約5千人
・検診受診者全体に対するがん発見率:0.156%
・要精密検者のうち、がんが見つかった割合(陽性反応の適中度):3.02%
分かりやすくいうと、
・検診を受けた人のうち、約20人に1人が「要精密検査(陽性)」になります
・陽性になった人のうち、大腸がんが見つかるのは約100人に3人です
なお、2024年度の報告でも、陽性者のうちがんが見つかった割合は2.99%とほぼ同じ水準でした。毎年、おおよそ同じ割合で推移しています。

「3%なら大丈夫」ではありません
「たった3%なら、精密検査を受けなくてもいいかも」と思う方もいるかもしれません。でも、ここで考えてほしいことがあります。
①3%は陽性の人が33人いれば、そのうち1人は大腸がんがあるという数字です。自分がその1人かどうかは、検査を受けるまでは誰にもわかりません。
②大腸カメラで大腸がんが見つからなかった場合でも、将来がんになる可能性があるポリープが見つかったり、10mm未満の比較的小さなポリープは日
帰りで取れます。これは、がんを予防する大きなチャンスです。
気になるデータ:①精密検査をうけない人が多い
もうひとつ、看護師として見逃せない数字があります。
2023年度の報告では、大腸がん検診で要精密検査となった人のうち、実際に精密検査を受けた人の割合は約7割、陽性になった人の約3割は精密検査を受けていないことになります。
検診は「受けること」より「陽性のあとに精密検査まで受けること」ではじめて意味を持ちます。
気になるデータ:②検診を受けている人は、実は半分ほど
2022年の厚生労働省「国民生活基本調査」では過去1年間に大腸がん検診(便潜血検査)を受けた人(40〜69歳)は、男性49.1%、女性42.8%でした。まだ、半数以上の人が大腸がん検診を受けていないことになります。

受診の流れ
では、実際に便潜血検査の受診の流れと陽性のあとの精密検査を受けるまでの流れを、順番に見ていきましょう。
ステップ1 案内を確認する
市区町村の大腸がん検診は、案内(受診券や申込書)が届くことが多いです。勤務先の健康診断や、人間ドックのオプションとして受ける方法もあります。費用や申込方法は、お住まいの地域や職場によって違うので、案内を確認してください。
ステップ2 専用のキットを受け取る
市区町村の案内に従い、指定の病院または職場や人間ドックで専用の容器を受け取る。
ステップ3 自宅で便を取る
自宅で、便の表面を採取スティックに便を付けて専用容器に入れる。
・説明書通りに、便をスティックに擦り取る
・容器に名前と採取日を必ず記入する
・便秘などで2〜3日採取日が空いても問題ない
その場合は1日目の容器は、冷暗所か冷蔵庫に保管し、室温で保管する場合は25℃以下に保つ。
・過度の便秘でどうしても期間内に排便が困難な場合は、同じ排便で場所を変えて(便の前方と後方など)と2ヶ所を採取することも可能である
・月経中は行わずに、生理が終わってから行う
・わからないときは遠慮なく、窓口に相談して大丈夫
ステップ4 期限までに提出する
提出場所と期限を確認し、忘れずに提出しましょう。「あとで出そう」と思っているうちに期限が切れてしまう人が本当に多いです。便を取ったら、その日のうちに提出の予定を立てておくことをおすすめします。
ステップ5 結果を受け取る
結果は後日、郵送などで届きます。
・陰性(検査不要) :今回は血液の反応がなかったという意味です。来年も忘れずに、便潜血検査を受けましょう。
・陽性(要精密検査):血液の反応があったという意味です。
がんと決まったわけではありませんが、大腸カメラをしている消化器内科の医療機関(クリニックや病院など)を受診し、精密検査を受けてましょう。
必ず、便潜血検査の結果を持参してください。
クリニックや病院の診察時間内に飛び込み(予約外診察)受診してもいいです。
また、かかりつけの内科のクリニックや病院がある場合は、主治医に相談して消化器内科のクリニックや病院に紹介状を書いてもらい、受診してもいいです。
ステップ6 精密検査をする(大腸カメラ)
便潜血検査が陽性になった場合は通常、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けます。
肛門から細いカメラ(スコープ)を入れて、大腸の中を直接観察する検査です。
・だいだい30分くらいの検査です。
・起きてするのが怖い場合は「眠ってできる」「苦痛が少ない」鎮静剤(ちんせいざい)を
使用した大腸カメラをしているクリニックや病院もあるので、眠っている間にできます。
・大腸カメラをする時は検査用のパンツを(男性用のトランクスみたい)使用するので陰部
は隠れます。
・検査中に10mm未満の比較的小さなポリープは日帰りで取れます。
大腸カメラで「異常なし」でも
もし、大腸カメラで大腸がんが見つからなくても、そこで安心して終わりにしないことが大切です。検診は、翌年以降も続けて受けましょう。

看護師から、最後にひとこと
大腸がん検診は、自宅でできる、体に負担がなく受けられるとても簡単な検査です。
それでも、「陽性と言われることが怖い」「めんどくさい」「症状ないし、自分には関係ない」と検査を受けない方が多くおられるのも事実です。
でも、検査を受けなければ、病気があっても見つかることはありません。
・陽性になっても、約97%の人は大腸がんではありません
・陽性の人の約3割が、精密検査を受けていません
・早く見つかった大腸がんは、治る可能性が高いがんです
今、あなたの手元に検診の案内が届いているなら、大腸がん検診の予定を立てましょう。
もし、過去に大腸がん検診を受けて「要精密検査」と言われ、そのままにしているなら、この機会に医療機関に相談してみてください。
「数年前に言われた」「今まで受けてこなかった」でも大丈夫です。
引用文献
[1] 国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」2024年度版公開(2024年11月27日)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2024/1127/index.html
[2] 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん 予防・検診」
https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/prevention_screening.html
[3] 日本医師会「知っておきたいがん検診:がん検診によるがん発見データ」(厚生労働省 地域保健・健康増進事業報告に基づく)
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/data/detection/
[4] 厚生労働省「令和5年度地域保健・健康増進事業報告の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/23/dl/R05gaikyo.pdf
[5] 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計:大腸」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html
[6] 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」
(概要の紹介:https://www.jfpa.or.jp/jfpa_ic/2022_7/)
※本記事の数値は、上記の公的機関の資料の公開時点のものです。最新の情報は、各機関のホームページでご確認ください。
